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詞には人に影響を与える力があります。
言霊と云ってもいい。
非科学的なことではなくて、
印象的なフレーズが記憶の深いところに

収まって、聴いた人のその時々の

気持ちとシンクロした時に、

鮮やかに蘇る。
たぶんそんなことだろうと思います。
そしてその言葉は人を励ましたり、

楽しい気分にさせたり、
切なさをつのらせたりするのでしょう。

事実、僕は10代、20代の頃に浜田省吾や

佐野元春を聴いて、
「この街を出たい」と思って

東京に出てきたし、
「つまらない大人にはなりたくない」と

今でも思っています。
無論、彼らの詞が僕の運命に

どれだけの割合で

影響を与えたかはわからないけれど。

僕の書く詞は、 売り上げから見れば、

力なんてほとんどないでしょう。

でも、思うのです。

「溺れるものは藁をもつかむ」という、
その溺れる人がつかむ「藁のような詞」

を書きたいと。
一生書けないかも知れないけれど、

そう思っているのです。

人生は、真面目に努力すれば、

結果が必ず良くなるなんていう、
素直なものではないと思うのです。
もちろん、まじめに努力したり、

夢を追い続けたりすることは素敵な

ことですが、どれだけ努力しても

叶わないことはあるし、
理不尽な不幸や悲しみに否応なく

向き合わざるを

えないこともあります。

現実に傷ついた人を救ったり、

癒したりすることは

僕にはできない。
でも、たとえ力にはなれなくても、

悲しみの中で
最後につかんでもらって、

何かを感じてもらえるような、

そんな「藁」のような詞を

書きたいと思うのです。

© 1997- Takashi Kojima All Rights Reserved.

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